それはきみだけのこと
会社の先輩と階段で会って、一緒に現場へ向かう。
今日はお昼ご飯食べたかったのになあって、そう小さくぼやく。
悲しくて、悔しくて、可哀想だった。
夜、家まで送ってくれた。
残業付き合ってくれたから、って。
初めて車の中で音楽を聞かなかった。
ひたすら、仕事の話をした。
ほとんど、とある人間について。
今日、現場で彼は言った。
今日はご飯食べた。
体に違和感があって、今日は食べた。
どうしたのかと思って聞いたら、少し貧血っぽかった、と。
昨日よりも悲しくて、腹立たしくて、心配で、どうしようもなかった。
もう大丈夫なの?もう元気になった?
無理しないで。
わたしだけじゃない。
みんな、心配してるんだよ。
そんなことしか言えなかった。
少しずつ、彼のことを知っていく。
彼の為に、なにか出来たら良いのに。